意識消失発作 ~救急対応~

皆さんこんにちは!
地獄の28連勤を終えたロトラです。
仕事の組み方を間違えるとこういうことも起こります。
秘書さんほしい(笑)

今日は初期研修医の先生向けに、夜間救急でよく来る“意識消失発作”の対応についてお話ししようと思います。
以下の順番でお話ししますね。
気になる項目だけでも読んでいってください。

  • 意識消失の話を始めた発端は?
  • 意識消失と意識障害の違い
  • 鑑別
  • 診察、検査
  • 対応、患者説明

意識消失の話を始めた発端は?

以前までの記事とは毛色が異なりますよね、この話題を書こうと思った理由をお話しします。
先日、ワクチン接種の仕事があったのですが、会場では接種の際に「注射や採血で倒れそうになったことはありませんか?」と血管迷走神経反射を起こしたことがないか、必ず聞くようにしています(倒れたら危ないですもんね)

接種に来られた高齢男性へこの質問をしたところ、「私はそんなにひ弱そうに見えるか?そういうことは若いひょろいのに聞きなさい」と気分を害されてしまいました。
血管迷走神経反射ではないけれども、意識消失発作で搬送されてくるのは圧倒的に高齢者のほうが多いんだけどなと思ったのが今回の話をしようと思ったきっかけです。

意識消失と意識障害

意識消失と意識障害、この違いを知っておかないと鑑別も検査もまるっきり変わってきます。
意識消失とは、俗にいう失神のことで大脳全体の脳血流が急激に低下したことにより一過性に意識を失う症状のことを指します。
多くは5~10分以内に意識を取り戻し、普段と同等の意識レベルへ回復します。
けいれんも発作後は、普段と同じ意識レベルまで回復しますので、意識消失発作との鑑別が難しい場合があります。
けいれんは脳の異常電気信号伝達や脳出血が原因と言われていますので、意識消失とは根本的に発症機序が異なりますね。

対して意識障害は、この意識消失の状態が遷延、増悪することを指します。
原因はAIUEOCHIPSとゴロで覚えた先生もおられるかと思います。
深くは触れませんが、下に一覧を張っておきます。


(医学語呂なう https://twitter.com/med56_bot)

ざっくりまとめると、意識が普段のレベルまで戻れば意識消失、症状が遷延してれば意識障害と言えます。

鑑別

意識消失の鑑別は、サンフランシスコ失神ルールというものに則って行います(Annals of Emergency Medecine 43 :224-232 2004 )
意識消失発作の中から緊急性や治療介入の必要性が高いものを拾い上げるためのルールといったところでしょうか。
以下の画像の赤い点線部分ですね。

意識消失の原因は、このCHESS以外に起立性低血圧神経調節性失神があります。
さらに神経調節性失神は、状況性失神頸動脈洞反射血管迷走神経反射に分けられますが、この3つは治療介入不要なものなので深追いしなくて問題ありません。

診察、検査

意識消失発作が運ばれてきたらこのような以下のような手順で診察、検査、診断していきます。

貧血所見から消化管出血、収縮期駆出性雑音から大動脈弁狭窄症閉塞性肥大型心筋症(突然死のリスクあり)、徐脈から洞機能不全症候群高度の房室ブロックなど身体診察の段階で疑える怖い疾患がありますね。
立位状態で意識を失うと無防備な状態で地面に打ち付けられるので外傷がないかの診察も必要です。

検査も12誘導心電図血液検査胸部レントゲンは必須ですね。
貧血ありそうならば静脈血液ガス(血液検査よりも項目は少ないが早く結果がわかる)、直腸診(黒色便、下血)も考慮します。
初発であったり、徐脈、低血圧であれば甲状腺ホルモンを追加してもいいです。
聴診や12誘導心電図で異常あれば、トロポニンCK-MB追加と簡易的な心エコー検査もやったほうがいいですね、IVC径(脱水溢水)、壁運動異常(急性心筋梗塞)、大動脈弁カラードプラー(大動脈弁狭窄症)などを見ることができれば十分でしょう。
低侵襲なのに情報量が多いし、COVID-19抗原検査結果を待っている間にやれてしまうので、練習しておく価値のある検査手技です。

対応、患者説明

異常な検査結果があれば、該当する科のDrへコンサルト
なければ基本帰宅でオッケーです。

 起立性低血圧を疑った場合は、ボリューム負荷しながらベッドを少しずつギャッチアップし、臥位、長坐位、端坐位、立位と起こしながら血圧をある程度回復させましょう(血圧低いまま帰宅させるとまた失神します)
起立性低血圧の既往が頻回にある場合は、薬剤性の可能性があるので内服調整に関する診療情報提供書をかかりつけへ送るようにしましょう。

 神経調節性失神(中でも状況性失神や頸動脈洞反射)は、交感神経(アクセル)と副交感神経(ブレーキ)のバランスが加齢によって崩れてきたことによって起こるものです。
高齢になるとすぐにアクセルを踏めず、血圧や心拍を上昇させられないってことですね。
排便や排尿、食事、頸部の可動などが原因になります。

 迷走神経反射は、神経調節性失神に分類されますが、状況性失神や頸動脈洞反射とは少し毛色が異なります。
こちらは、発生機序ははっきりわかっていませんが、恐怖や精神的ストレス、疲労などを感じているときや体質で起こしやすいといわれています。
コロナワクチン接種などの予防接種や連日徹夜で作業していた方がよく救急車で運ばれてきます、やはり若い人に多いですね。

異常所見が見当たらず、神経調節性失神、起立性低血圧と診断したものの、12誘導心電図で不整脈をつかみ切れなかっただけという場合ももちろん存在しますので症状繰り返す場合は、循環器内科を受診するよう指導することも忘れないでください。

長くなりましたが意識消失発作は以上です。
次は、めまいのお話しようかな。
読んでいただいた方ありがとうございました。

参考文献:「救急外来 ただいま診断中!」 坂本壮 著